法律で認められる離婚原因
法律で認められる5つの離婚原因
離婚は、原則、当事者の合意があれば出来るのですが、自分がどうしても一方的に離婚をしたいというケースや反対に相手から離婚したいというケースも当然あります。
そんな場合、協議しても離婚できないとなると、裁判上で離婚するしかありません。ただ、どんな条件でも裁判で離婚できるかと言えば、それは違います。裁判離婚が認められるには、次の5つのいずれかの法定原因が必要となります。
1,配偶者に不貞な行為があったとき
離婚原因の約4割が、この不貞行為です。(司法統計より)不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意志に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます。つまり、相手が、妻以外もしくは夫以外の者と性交渉を行うことです。
この行為が、1回であろうと継続的であろうと関係なく、不貞行為と認められます。また、異性だけでなく、同性との性交渉も認められます。(但し、後述する「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当する可能性もあります)
その他の例としては、夫が風俗関係の女性と肉体関係を持った場合や妻が売春行為を行った場合、更には、夫の妻への強姦行為なども該当します。
× 不貞行為が離婚原因と認められないケース
- 夫婦生活が完全に破綻状態の後に不貞行為があった場合。
- 双方が不貞行為を行っていた場合。
2,配偶者から悪意で遺棄されたとき
夫婦の一方が悪意を持って勝手に家を出ていってしまった、病気の配偶者を長期間放置し一切看病しない、生活費を家に入れないなどの行為を行うと、悪意の遺棄にあたります。
× 悪意の遺棄が離婚原因と認められないケース
- 配偶者のDV・不貞に耐えられず、やむなく別居する場合。
- 病気治療の長期入院や転勤での単身赴任。
- 配偶者の親族が無理矢理同居し、一方の配偶者を罵倒した事による別居。
3,配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
配偶者の生死が、3年以上も確認できない状態が続いた場合、一方の訴訟提起により、離婚できます。なお、起算点は、配偶者が最後に連絡を取ってきた日からです。ただ、最近では、情報網の発達などで相手を見つける事が出来ないという事が少なくなり、ほとんどこの事例に当てはまる案件はないに等しいです。
× 配偶者の生死が3年以上明らかでないときが離婚原因と認められないケース
- 住所不明の配偶者から、たまに連絡がある場合。
- 不明の配偶者を知人が目撃した場合。
4,配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
医師の鑑定結果を基に、配偶者が強度の精神病にかかっていて、回復の見込みのない場合、離婚原因の一つとして考えられ、離婚が認められます。強度の精神病とは、統合失調症、躁鬱病などを指し、アルコール中毒、麻薬中毒、ノイローゼなどは認められておりません。
配偶者の離婚後の生活や精神的不利を考慮する観点から、裁判所では、この精神病を原因とする離婚は消極的です。
× 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないときが離婚原因と認められないケース
- 単なるヒステリー。
- 治療が一時的なもの。
5,その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
前述の1~4の離婚原因以外に、事実上、婚姻生活が破綻状態にあり、さらに回復の見込みがない場合の離婚原因として「婚姻が継続しがたい重大な事由があるとき」があります。ただ、具体的な事由は、特に定義があるわけではなく、あくまでも裁判官の裁量によって決定されるとされています。
これまでの事例から、比較的特徴的なものを挙げました。なお、離婚原因のワーストスリーは「不貞」「性格の不一致」「DV」です。
1 性格の不一致
離婚原因の約7割が、性格の不一致とされています(司法統計より)ただし、離婚裁判での事由としては、かなり難しく認められない場合が多い。
以下を大まかな判断基準としています。
- 医師の精神鑑定の有無。
- 病状の長期化と回復の見込みの有無。
- 配偶者を、これまで誠意をもって看護、介護の有無。
- 離婚後の生活保障の有無。
2 DV(ドメスティックバイオレンス)
性格の不一致に次いで、2番目に多いとされる離婚原因です。配偶者の精神・肉体的DV行為等は、連続性がある場合、離婚原因と認められます。ただし、日常の夫婦げんか程度や1回だけ手が出たというケースでは、難しいです。
証拠材料としては
- 医者の診断書
- DV現場の写真
- 罵声を浴びせている音声など
3 浪費(勤労意欲の喪失)
配偶者が、全く仕事をせず、賭け事などで浪費し、生活を困窮不安定な状態にした場合、離婚原因となります。ただし、借金を精算すれば生活の安定化が図れると判断された場合は、離婚原因としては認められない事もあります。
4 犯罪・服役
配偶者が、犯罪行為により服役となった場合、それだけでは離婚原因の理由とはなりませんが、その行為を起因として一方の配偶者の名誉が傷つけられたり、家族の生活に困難をもたらしたりする事が離婚原因となることがあります。
5 夜の営みがない
健全な夫婦にとって、夜の営みは婚姻維持のために重要な行為です。
6 宗教活動
夫婦には、互いの協力により婚姻生活を維持するという義務があります。配偶者の過度な宗教活動により、家庭を放棄し扶助協力違反となった場合、離婚原因となります。
宗教活動の内容、程度、信仰心、宗教への理解度、家庭への影響等を考慮して、判断されます。
7 親族との不和
TV ドラマでよくある嫁舅の争い、現実でも多々見受けられるケースであり、配偶者と親族の不和が離婚原因となる事があります。単に、配偶者と親族の仲が悪いだけでは、離婚は認められませんが、一方の配偶者が非協力的であり、逆にこちらを責め立てるような場合等は、認められる事があります。